あるじの小言

「あるじの店」(BAR Virgo)や洋酒(特にウイスキー)、スコットランド、まれに赤坂について書いています。

 ボトラーズ

ちょっと前の話ですが、お客様に「シグナトリーを下さい。」と言われた事がありました。
でも、「シグナトリー」というのは商品名ではなく会社名(ボトラーズ)なので、その説明をしたのですが、ちゃんと理解してくれたのかどうかはいささか不安がありました。
そこで、ここでも上手く説明できるかどうか自信はないのですが、スコッチウイスキーの世界で、最近よく見かけるボトラーズ」物について書いてみたいと思います。
ボトラーズ」物というのは、蒸留所が自分の所で責任を持ってボトリング及び販売をしている物ではなく、蒸留所から原酒を樽買いした業者が、自社のラベルを貼って(蒸留所名を小さく書いたりして)販売している物の事を言います。
蒸留所が自分の所でボトリングして販売している物を「オフィシャル」物というのに対して、これらを「ボトラーズ」物と言って区別しているのです。
で、あるじがこの世界に入った当初は、「ボトラーズ」物といえば「ゴードン&マクファイル」「ウィリアム・ケーデンヘッズ」ぐらい(しか知らなかったのかもしれないが)だったのですが、最近ではいろんな業者の物があり、あるじにも何社在るのか分からない状況になっています。
そして、この「ボトラーズ」物に関しては、すごく美味しいなと思えるものもあるのですが、時には外れたな、と思えるものがあるのも否めないのです。
これは「ボトラーズ」物を出している業者としては、樽で買い付けているので、そのウイスキーが良くても悪くても商品として販売しないと儲けられないからではないかと、あるじは思うのです。
で、「オフィシャル」の商品は、蒸留所の評価に直結するせいか、幾つもの樽に入っている原酒を混ぜて、一定の味にして出荷をしていますが、「ボトラーズ」と言われる業者は、希少価値性を売りにしているのであって、良い商品を売ろうとも思ってはいるのでしょうが、必ずしも全てが良いウイスキーであるとは限らないジレンマに陥っているようにも思われるのです。
そして「ボトラーズ」物が増えることによって、コレクターの方にはいろんな商品があってよいのでしょうが、美味しいウイスキーを飲みたいと思われている方にとっては、どれを選べばよいのか分かりづらく、また美味しいと思った商品が「ボトラーズ」の物だった為、2度と飲めなくなってしまったりと、難しい問題も出てきているような気もします。
まぁそれもこれも一期一会と思って楽しめれば、またそれも良いのかもしれませんけどね。
それに最近は「オフィシャル」ものでも限定品が増えてきていますし・・・。
またそれこそ最近では、「ボトラーズ」業者でも、バッティングモルトなどで安定した味の商品を出してる業者も現れ始めているんですよね。
とまぁ、まとまらない話を書いてみましたが、所詮ウイスキーは嗜好品なので、皆さんが美味しいと思って飲んでいただければ、提供する側のあるじとしては嬉しいんですけどね。
後はお客様がいつも安定した美味しさを望むのか、はずれを引くことがあっても時に凄く美味しいと思える逸品に出会えるのを望むのか、なのでしょうね。
で、あなたならどうします?
あるじなら、・・・想像にお任せします。