あるじの小言

「あるじの店」(BAR Virgo)や洋酒(特にウイスキー)、スコットランド、まれに赤坂について書いています。

  ベンチャーウイスキー秩父蒸溜所見学 −3−

barvirgo2012-10-26

今日も昨日の続きで、秩父蒸溜所ウイスキー造り醗酵工程から聞いてきた事を書きます。
さて糖化が終わり大麦の澱粉が糖分に変わった麦汁をトータルで2,000Lウォッシュバック(醗酵槽)に移します。
秩父蒸溜所のウォッシュバックは全部で8基、どれも3,150L超の容量があるそうです。
そして材質はミズナラ、木のウォッシュバックを使用している蒸留所は他にもありますが、ミズナラを使用しているのは秩父蒸溜所だけだそうです。
そして麦汁2,000Lが入ったウォッシュバックに約10kgのウイスキー酵母を投入するそうです。
それで醗酵が始まるそうなのですが、醗酵には約4日間かかり、最初の2日間が投入した酵母による醗酵で、残り2日間はウォッシュバックに棲みついた乳酸菌による醗酵だそうです。
但し、ミズナラのウォッシュバックで醗酵させたからといって、オレゴンパインなど他の木材で出来たウォッシュバックで醗酵させて出来たウイスキーと味わいが違うかどうかは比較していないので分からないそうです。
ただ木に棲みつく乳酸菌がミズナラと他の材では種類が違うらしく、たぶん違った(華やかな)味わいを生んでいると思われるそうです。
また木製のウォッシュバックなのでメンテナンス期間の使用していない時などは、3日間おきに水を張ったり抜いたりして、木が乾燥しないようにまた腐ったりしないように手入れをしないといけないそうです。
そして醗酵が終わった麦汁はアルコール度数で約7%、エールビールのような状態になるそうです。
その状態になった物をウォッシュといい、それを伝統的な単式蒸留器(ポットスティル)に投入し2回蒸溜して、ウイスキー原酒を取り出すそうです。
で蒸留は、先ずウォッシュスティル(写真左)に醗酵の終了したウォッシュを張り込み1回目蒸留を行い、次にスピリッツスティル(写真右)で2回目の蒸留を行うそうです。
蒸留方法はスチームによる間接加熱で1回目の蒸留が6時間ちょっと、アルコール度数約7%だったウォッシュが約20%で、張り込んだとき2,000Lだったものが約600〜700Lのローワインという液体なるそうです。
そして1回目の蒸留で得たローワインをスピリッツスティルに張り込み2回目の蒸留を行うそうです。
で2回目の蒸留も1回目と同じスチームの間接加熱で、今度は流出してくる液体を3分割にして取り出すそうです。
この3分割した液体の事を流出順に、ヘッド、ハート、テールと呼ぶそうです。
そしてハートの部分だけを取り出して樽に詰め、熟成させるそうです。
因みにヘッドの部分は刺激なフレーバーが多く、テールの部分は雑味が多く熟成に向かないそうです。
そしてハートの部分を取り出すことをミドルカットといい、2つのポットスティルの間にあるスピリッツセイフにあるレバーを動かして流出口を切り替えているそうです。
そしてこのミドルカットのタイミングが難しく、基本的にはアルコール度数と時間で決まるそうですが、秩父蒸溜所で最も重視するのは人間の五感だそうです。
なので、毎日香りと味を確かめてカットするタイミングを決めているそうです。
またポットスティルが銅製である事も大事で、もともとは加工がしやすく銅で出来ていたそうですが、現在では蒸留の際に銅イオンが出てウイスキーに不要な成分を取り除いてくれる事が、科学的に証明されているそうです。
そして形も大事で、秩父蒸溜所のポットスティルは小さく高さも低く、ヘビーでリッチなウイスキー原酒が取りだせるようにというコンセプトで造ってもらった物だそうです。
そして2回の蒸留で取り出したハートの部分のアルコール度数は70%前後、量にして約220Lだそうです。
そして取り出したハートの部分20回分をタンクに貯め、それからアルコール度数を63.5%に加水してから樽に詰めるそうです。
まっ!長くなってしまいましたが、だいたい以上が秩父蒸溜所のウイスキー製造についてです。
それで、これでもだいぶ簡単に書いたつもりなので、実際にウイスキーを造るのが如何に大変で凄い事なのか、分かって頂ければ幸いです。
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