あるじの小言

「あるじの店」(BAR Virgo)や洋酒(特にウイスキー)、スコットランド、まれに赤坂について書いています。

ハイランドパークのセミナー 〜2〜

barvirgo2017-10-27

さて、ハイランドパークのセミナーで伺ってきた話ですが、前回はハイランドパークの概要的な話だったので、今回は造りについてなど書いていこうと思います。
先ずハイランドパーク蒸溜所は今でも伝統的なフロアモルティングをしている蒸溜所だという事です。
そしてこの説明の時に気になったのは、現在スコットランドでフロアモルティングをしている蒸溜所を5ヶ所と言っていたことです。
ハイランドパークにバルヴェニースプリングバンクボウモアラフロイグ、この5ヶ所だというのです。
そしてキルホーマンについては殆どやってないから入れても0.5ヶ所だと言うのです。
まあそこで突っ込んでも仕方ないので言いませんでしたが、キルホーマン蒸溜所はフロアモルティング用のモルトバーンを倍に広げ今まで以上に自社モルティングを増やそうとしているので、これを0.5というのはちょっと失礼かなと感じました。
ベンリアック蒸溜所ぐらいそれこそ少ししかフロアモルティングをやっていないならまだしも自社モルティングの比率でいえばハイランドパーク蒸溜所より高いキルホーマンを0.5っていうのは・・・って感じです。
そして今回のセミナーに限らず、他のセミナーでも自社の良さをアピールする為に出す他社の情報は間違っていることが多いです。
なのでセミナーに参加されている皆さんも、他社を引き合いに出した情報については基本信じない方が良いと思います。
なんてちょっと脱線しましたが、まあ確かに伝統的な造りをハイランドパークが守っているのは間違いありません。
という訳で製造工程では仕入れた大麦を先ず浸麦(スティーピング)します。
通常保存してある大麦は乾燥してあるので発芽を促す為に水分を含ませるわけです。
このスティーピングは約2.5日だそうです。
そして次が発芽工程、ここでフロアモルティングを行ないます。
これは5〜7日かかるそうです。
そして次に乾燥(キルニング)ですが、現在はピート(泥炭)を焚く時間が8〜12時間、その後石炭を焚く時間が約20時間だそうです。
これは現在ハイランドパークが原料のモルトに求めるフェノール値が38〜45ppmだからなんだと思いますが、あるじが蒸溜所を訪れた2011年はピートを約18時間焚いていました。
なので同じ蒸溜所だからといって、何時までも同じ造りをしている訳ではないんだなというのが分かります。
そして今回のセミナーではこの後の造りはかなり端折っていたので、糖化・醗酵等の過程にはもしかしたらそれほど強い拘りがないのかもしれません。
ただあるじが蒸溜所を訪れた時にラーチ(カラ松)のウォッシュバック(醗酵槽)が2基あったので、当時ラーチなんてあまり聞かなかったから現在のウォッシュバックはどんな構成になっているのか聞いたところ、当時ダグラスファー10基のラーチ2基だったのが、現在ではダグラスファー8基のオレゴンパイン4基とラーチのウォッシュバックが無くなって全て米松系になったことを知りました。
6年も経てばウォッシュバックの入れ替えが行なわれていてもおかしくはないのですが、ラーチが1基も無いと聞くとなんか寂しかったです。
で、それからピートの説明、今回の説明ではピート掘っている地域としてメインランドのアバディーンシャーにトミントール、そしてアイラ島オークニーの4ヶ所を挙げていました。
但し、これも実際には他の地域で掘ったピートを使っている蒸溜所があるので、一般論として聞いておく程度にして貰いたいと思います。
そして当然ハイランドパーク蒸溜所ではオークニーで採れたピートを使っているのですが、そのポイントはメインランドやアイラと明らかに違うのはオークニー諸島には殆ど木が無く、メインランドやアイラなら含まれる木がオークニーのピートには全く含まれていないという点です。
なのでやはり同じピーティーといっても、使っているピートによってモルトに付く香りなど違うので、ピーティーという言葉の使い方も少し考えた方が良いのだろうなと思います。
で、このあと熟成の話に移り、ハイランドパークはエドリントンというマッカランなどと同じグループの傘下蒸溜所で樽についての拘りは強く、そこまでここで書くと長くなるので割愛し、あと1つあるじが気になったのは年間の気温変化ですかね。
前回のセミナーでは2〜12度だったのが、今回は4〜12度だったのです。
下限が2度上がっているのです。
蒸溜所なら何時も気温変化などは熟成に大きく影響する為ちゃんと調べているんでしょうから、下限の2度上昇っていうのは地球の温暖化の影響なのか?今はまだ熟成に大きな影響は無いかもしれませんが、ちょっと気になる話でした。
そしてまだまだ書きたい事もありますが、長くなってしまうので今回はここまでとさせて頂きます。
なのでもっと話を聞きたい方は是非あるじの店(BAR Virgo)までお越し下さい。
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