あるじの小言

「あるじの店」(BAR Virgo)や洋酒(特にウイスキー)、スコットランド、まれに赤坂について書いています。

 ベンチャーウイスキー秩父蒸溜所 2015冬 〜その3〜

barvirgo2015-12-14

さて、秩父蒸溜所の蒸溜までの行程を前回は紹介致しました。
この後蒸溜されたばかりのニューポットは樽に詰められ貯蔵庫で永い眠りにつくのですが、秩父蒸溜所では樽詰め前に加水し、アルコール度数70%だったニューポットを63.5%にして樽に詰めているそうです。
因みにこの63.5%というのはスコットランドでも多くの蒸溜所が取り入れている樽詰め時のアルコール度数ですが、サントリーやニッカも同じかというとそんな事はなく、それぞれに樽詰めする時のアルコール度数に拘りがあり、今回の見学とは関係ありませんが、特にキリンの富士御殿場蒸溜所はアルコール度数50%と他の蒸溜所とはだいぶ違うアルコール度数で樽詰めしてたりします。
考え方の違いというか本当にそれぞれの拘りなので、こうした点一つとっても面白いですよね。
そしてこのあと貯蔵庫を見せてもらうのですが、その前に製造棟内に在るその他の設備(ボトリングルームなど)の説明をしてもらいました。
まっ、そのあたりについて今回は省略させて頂きます。
そして貯蔵庫、製造棟の向かいに在るのは第1貯蔵庫で、少し離れた場所に第2・第3貯蔵庫が在り、また現在は第4貯蔵庫も建設中でした。

秩父の貯蔵庫はダンネージ式という木のレールを渡して3〜4段に積む方式を取り入れていて、基本は3段で「ちびダル」と呼ばれる約125リッターのクォーターカスクを積む場合のみ4段にしているそうです。
また収納している樽種としてはバーボン樽(約200リットル)、パンチョン樽(約500リットル)、シェリー樽(約500リットル)、ポートパイプ(約600リットル)、ミズナラ樽(約500リットル)などなど小さい蒸溜所にしてはかなり多くの樽種を使っているそうです。
そしてバーボン樽も結構色んなバーボンメーカーの樽があり、スコットランドの蒸溜所だとどこのバーボンメーカーの樽でも大差ないと言うのですが、ここ秩父ではそれぞれに違いがあると考え熟成させているそうです。
同じバーボン樽でも違いが出ると感じられるのは、それだけ日本人というか秩父蒸溜所の皆さんの感覚が繊細なんでしょうね。
それと今まで何度か来た時に聞いていたエンジェルズシェアは3%ぐらいで何年か経ってみないと正確な数字は分からないと伺っていたのですが、今回は3〜5%とある程度分かってきたようです。
秩父は寒暖の差が激しいと言っていましたが、やはりその分エンジェルズシェアは少し多いのかなと感じました。

後は各貯蔵庫に約1,500樽入るそうで、樽の数え方はサントリーと一緒で1丁2丁、「丁」と数えていました。
こうした説明を聞いた後は少し移動し、第2貯蔵庫と樽工場を見学させて頂きました。
第2貯蔵庫には未だ軽井沢の樽が数十丁残っていました。
それと第3貯蔵庫は壁の色を変えてあり、壁の色の違いで貯蔵庫内の温度が変わって、同じ樽種、同じ期間の熟成でも違いが出るのを期待しているそうです。
まっ、この壁の色の違いでどれだけ熟成が変わるのかは、これからまた数年経たないと分からないんでしょうね。
そして樽工場、この日は日曜日で作業はしていませんでしたが、樽造りの説明をしてもらい、現在は樽の修理はもちろん新しいたるも1週間に5〜6丁は造れるようになっているそうです。
またミズナラ材そのものを見せてもらったのですが目がとても詰まっていて、当たり前といえば当たり前ですが香りを嗅ぐとミズナラ熟成のウイスキーを嗅いだ時に感じられる香りが強く感じられました。
それと目が詰まっている材ほど導管が多く、見た目とは違って持つと軽いのは、言われてみればなるほどなんですが、新しい発見でした。
で、実はまだまだ伺った話は沢山あるのですが、全てをここでは紹介出来ないので今回はここまでとさせて頂き、後は皆さんが飲食店関係者なら自ら申し込み、またそうではない場合は行きつけのバーのオーナーにでも申し込んで貰い、秩父蒸溜所を訪れ、自らの目や耳や鼻で秩父蒸溜所のウイスキー造りの拘りを肌で感じてもらいたいと思います。

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