あるじの小言

「あるじの店」(BAR Virgo)や洋酒(特にウイスキー)、スコットランド、まれに赤坂について書いています。

 ベンチャーウイスキー秩父蒸溜所−2−

barvirgo2011-12-20

昨日マッシング(糖化)まで書いたので、今日はファーメンテーション(醗酵)から続けます。
糖化して得られた約2,000Lの麦汁をウォッシュバック(醗酵槽)に移すのですが、秩父蒸留所のウォッシュバックは木製で、しかもミズナラで造られています。

左:醗酵過程の説明をしてくれる肥土氏     中:No1のウォッシュバック、容量3129L     右:ウォッシュバックの中
因みにウォッシュバックの主流はステンレス製で、木製の物を使っているところもありますが、それでも殆どの蒸留所はオレゴンパイン(米松)等で造られているので、ミズナラは珍しく、というか世界でもここ秩父蒸留所だけだそうです。
それで、この2,000Lの麦汁が入ったウォッシュバックに約10kgの酵母を加え、足掛け4日間醗酵が行われるそうです。
で、醗酵は最初の2日間が加えた酵母によるもので、残りの2日間はウォッシュバックに住み着いた乳酸菌によって醗酵が続くのだそうです。
そして、この醗酵でウォッシュバックの中の麦汁に約7%のアルコール分が生まれるそうです。
そしてこの麦汁の事をウォッシュといい、それでこのウォッシュを入れて1回目の蒸留をするので初溜釜の事をウォッシュスティルというそうです。
また秩父蒸溜所では、ピーティーモルトも仕込んでいるそうですが、ミズナラのウォッシュバックを使っている為、ピーティーモルトを使って仕込むとウォッシュバックに香りが付いてしまう為、夏のメンテンナンス前の1ヶ月間だけピーティーモルトを仕込むようにしているそうです。
そしてヘヴィーピートのモルトを仕込むということだったので、どのくらいのフェノール値のモルトを仕込むのか聞いたところ、フェノール値でいうと51〜59.5%ぐらいという事でした。
で、なぜ幅があるかというと、秩父蒸溜所ではフェノール値を指定してピートを焚いてもらうのではなく、委託しているスペイサイドの河口近くに在るポートゴードンというモルトスター(モルティング工場)のモルティングに掛かる最大日数が3日間なんだそうですが、その3日間フルにピートを焚き付けてくれとオーダーを出している為その時の状況に応じてフェノール値にはどうしても幅が出てしまうのだそうです。
しかし、幅はあるにしても高いフェノール値だし、そこまで高いフェノール値の原酒を仕込んでいたんですね。
肥土氏曰く感覚的にはラフロイグアードベッグかそれ以上のフェノール値になっているそうです。
なので、そのピーティーな原酒も何時かはウイスキーとなってリリースされる訳ですから、その日が来るのも楽しみですね。
(続く)
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