あるじの小言

「あるじの店」(BAR Virgo)や洋酒(特にウイスキー)、スコットランド、まれに赤坂について書いています。

ガイアフロー静岡蒸溜所見学に行って来た! ~その4~

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麦芽粉砕、糖化、発酵の工程と見せていただき今度は蒸溜所見学最大のポイント蒸溜工程です。
ガイアフロー静岡蒸溜所には蒸溜器が4基設置されていました。
メルシャン軽井沢蒸溜所で使われていたポットスティル(初溜用)、そしてスコットランドフォーサイス社に依頼して建造してもらったという薪を使った直火蒸溜のポットスティル(初溜用)、そして同じくフォーサイス社製で再溜用のポットスティル、また今現在は使っておられないそうですがドイツ・ホルスタイン社製のハイブリットスティルの4基で、やはり注目は初溜用の薪直火蒸溜器に軽井沢から持ってきた蒸溜器ですね。
まず直火蒸溜は行なっている蒸溜所自体少ないですし、直火蒸溜をしているにしてもニッカ余市蒸溜所の石炭直火以外はまずガスを使っていますから、まきを使用するというのは本当にチャレンジだと思うので、ここから生まれる原酒、そして将来のウイスキーが楽しみです。
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またいまや幻のウイスキーと化した「軽井沢」を造っていたメルシャン軽井沢蒸溜所のポットスティル、オークションで落とした時には4基あったそうですが結局使えたのは1基と聞いていて実際1基なのですが、これは実は4基あったポットスティルの使える部分を合体させて出来た1基だそうで、これはある意味軽井沢の設備を一式すべて買い取ったのは正解だったんだなと感じました。
そしてこの軽井沢ポットスティル、静岡蒸溜所の仕込み量からするとちょっと小さめの3,500リッターの容量なので、このスティルで蒸溜する際は2日に分けて(現在は1日1仕込の為)行なっているそうです。
で、こうして薪直火と元軽井沢の初溜釜で蒸溜された原酒をフォーサイス社製の再溜釜で蒸溜することで、約7~8%だったウォッシュ(もろみ)のアルコール度数が約70%ほどに上がり、イーストを加えておよそ6,000リッター近かった原酒の量は500リッターほどのニューポットと呼ばれるモルトウイスキー原酒なるそうです。
そしてこのアルコール度数約70度のニューポットに少し水を加えアルコール度数63.8%、500リットルが約550リットルにしたもの(ニューメークスピリッツ)が樽に詰められるそうです。
なので1日でおよそバーボン樽にして3樽弱を現在は仕込んでいるって感じでした。
ただ仕込み量は今後増えていくと思うので、あくまでこれは現状の数字だと思って下さい。
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それから見学としては最後のウェアハウス(貯蔵庫)へ、ウェアハウスは現在2棟あるとの事で見学させて頂くのは第2貯蔵庫、第1はダンネージ式といわれる貯蔵スタイルだそうですが、見せて頂く第2の方は写真の通りラック式といわれる貯蔵スタイルになっています。
またこのウェアハウス、写真だと分からないのですが天井に窓が幾つもあり、光が入るので通常のウェアハウスより庫内温度が上がるし、高低差もあるので樽の置いてある場所でかなり熟成環境が変わることが考えられ、樽の種類は殆んどバーボン樽中心ではありますが、熟成期間は変わらなくても熟成が早いものや熟成度合いの違う原酒が造れて、製品化する際には熟成年が若くても結構複雑味のあるシングルモルトウイスキーが造れる気がして、製品化されるのが楽しみになりました。
という訳で見学の後は試飲やお買い物、または見学中に聞けなかったことなどお伺いをし、ガイアフロー静岡蒸溜所の見学を終えました。
ガイアフロー静岡蒸溜所の中村社長及びスタッフの皆様、また今回の蒸溜所見学ツアーに参加くださった皆様、新型コロナの影響もあって日程が変わるなどご迷惑をお掛けしましたが素晴らしい蒸溜所見学が出来たこと、あるじ心より御礼を申し上げます。
本当にありがとうございました。

ガイアフロー静岡蒸溜所見学に行って来た! ~その3~

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静岡蒸溜所見学、大麦麦芽(モルト)の粉砕工程を伺ったら次は糖化工程、静岡蒸溜所は導線がとても良く壁1枚挟んで直ぐ隣りにマッシュタン(糖化槽)が設置してありました。
ちなみにマッシュタンは日本の三宅製作所製、それで1回の仕込みにモルト1トン使うそうですがそれに対しお湯を2回加えて麦汁を取るそうです。
f:id:barvirgo:20200913131934j:plain:left:w380因みに1回目のお湯は4,000リッター、温度は75~80度、そして2回目が2,000リッターで温度は90度弱だそうです。
また静岡蒸溜所では珍しく3回目のお湯は投入しないそうです。
多くのモルトウイスキー蒸溜所では3回乃至4回投入しているので、これは珍しいです。
まあ他の蒸溜所では3回目4回目のお湯で少しでもモルトの中に残っている糖分を回収して次の仕込みの1回目に投入するお湯として使うため投入するのですが、当然そのお湯を次に使うために回収したお湯を溜めておくタンク等が必要になるのがその貯水タンクを置く場所を設けられず、3回目のお湯は投入していないのだそうです。ただそれでも糖分の回収率は悪くないそうです。
そして取れる麦汁は約5,200リッター、これを温度を落としてウォッシュバック(発酵槽)に張り込むそうです。
f:id:barvirgo:20200913132535j:plain:right:w380という訳で糖化工程の説明を伺った後は再びウォッシュバックの置いてある部屋(タンルーム)へ、蒸溜所見学の最初ではウォッシュバックの下部を見せて頂きながらウォッシュバックそのものの説明を伺いましたが今度は発酵工程について伺います。
発酵の為に使用しているイースト(酵母)はイタリア産のドライイースト、量としては2.5~10Kgと状況に応じて結構変えているそうです。
またオレゴンパイン(米松)製のウォッシュバックで発酵させたウォッシュ(もろ味)は元・軽井沢蒸溜所から引き取ったポットスティル(蒸溜器)で、そして静岡の杉で出来たウォッシュバックで発酵させたウォッシュは直火釜のポットスティルで蒸溜しているそうです。
それと発酵の時間は約36時間、それでおおよそ7~8%のアルコール度数になり、そこから木製のウォッシュバック特有の乳酸発酵が始まりトータルで3~5日発酵にはかかるそうです。
また乳酸発酵に関しては他の蒸溜所ではあまり説明されないウォッシュのペーハー値で発酵の度合いを判断しているという話を伺い、ペーハー値が大事なのかと改めてウイスキー造りの面白さを感じました。
てなところでまた長くなってしまったので、蒸溜からはまた後日・・・

ガイアフロー静岡蒸溜所見学に行って来た! ~その2~

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さて、ウォッシュバック(発酵槽)の容量や数に材質を伺った次に見せて頂いたのは所謂ミリングルーム(麦芽粉砕室)、入って直ぐの場所には大きな鉄製のサイロ(大麦麦芽を入れておくタンク)があり、このサイロには30トン以上の大麦麦芽が貯蔵出来るそうです。
f:id:barvirgo:20200913130749j:plain:left:w380そしてその隣りにはグレーンセパレーターとディストーナーという大麦麦芽をサイロからモルトミル(麦芽粉砕機)に移す前にゴミや小石を取り除くための機械が設置されています。
左写真がグレーンセパレーターで、このグレーンセパレーターの下部にディストーナーがあります。
静岡蒸溜所では静岡産含め国産の大麦も使用しているそうですが、やはりスコットランド産の大麦が多く、またその他ビール用の大麦などを使用しているそうですが、国産はさほどゴミや小石は出てこないそうなんですが、スコットランド産は結構なゴミや小石が混ざっているそうです。
f:id:barvirgo:20200913131748j:plain:right:w380そしてグレーンセパレーターとディストーナーの先にはポーティアス製のモルトミル(麦芽粉砕機)が鎮座しているのです。
このポーティアスのモルトミル、スコットランドの多くの蒸溜所が使っていますが何しろ丈夫、壊れないので有名で、このモルトミルを製造していたポーティアス社を2度も倒産させてしまった伝説の麦芽粉砕機なのです。
日本にもサントリーの山崎と白州、そしてここ静岡蒸溜所の3機のみと、あるじはこれを見られるのを楽しみにしていたぐらい珍しい機械です。
で、このモルトミルが静岡にある理由がヤフオクだそうで、メルシャン軽井沢蒸溜所の閉鎖で、軽井沢蒸溜所の設備一式がオークションに掛けられていたのを他の設備と一緒に505万円で落札したそうです。
そして見学していた時に中村社長がこのモルトミルも何時まで使えるのか分からないと仰っていたんですが、聞くところによると1989年製、ぜんぜんポーティアス社製としては新品で、スコットランドの各蒸溜所で使われている物から考えると後30年ぐらいは余裕でいけると、あるじ的には思いました。
何しろスコットランドじゃ50年物60年物、すごいのになると80年前に造られたモルトミルが現役ですからね。
っと、ちょっと話が脱線しました・・・
そして麦芽の粉砕、麦芽を粉砕したものをグリストと言いますがこのグリストはハスク、グリッツ、フラワーの3つの部分に粉砕比率が分けられるのですが、その多くの蒸溜所が2:7:1を基本としているところ静岡蒸溜所では3:6:1と若干ハスク(籾殻の部分)を多くしているとの事でした。
グリストの比率は次の糖化工程においてとても大切になってくるので、こうしたちょっとした違いを伺えるのはそこの蒸溜所の考え方の一端が見えて面白いです。

で、また長くなってしまったので次の糖化工程からはまた後日書きます。

ガイアフロー静岡蒸溜所見学に行って来た! ~その1~

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先日の日曜日、当店のお客様ともどもガイアフロー静岡蒸溜所を見学させてもらいました。
蒸溜所が出来てからもう直ぐ4年、やっと見学することが出来ました。
ただ静岡蒸溜所が誕生してから4年近い訳ですから当然蒸溜所のホームページやこれまでに蒸溜所を訪れた皆さんが書かれたブログ、またYou Tubeなど蒸溜所の情報はたくさん発信されているので、自分が見学してきた話は書かなくてもとも思ったんですが、凄く丁寧に案内して頂き、また情報として文字や映像で見るのとは感動も違ったので、ここでも文字や写真になってしまいますが簡単に紹介出来ればと思います。
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さて、ガイアフロー静岡蒸溜所、見学は事前予約制となっています。
見学時間は試飲を含め2時間、平日が基本14:00〜16:00で、忙しい日は11:00〜13:00も行なうそうです。
そして嬉しいことに先月末から土・日・祝も見学が出来るようになったのです。
で、土・日・祝の見学は10:00〜12:00、12:30〜14:30、13:30〜15:30の3回、受付は見学の30分前からとなってます。
皆さんも見学に訪れる際は
静岡蒸溜所 見学ツアー 予約ページ (Shizuoka Distillery Guided Tour)
上記の静岡蒸溜所の見学ツアー予約サイトからお申し込みください。
という訳であるじ達の見学、当初は3月の予定でしたが新型コロナの影響で今月に、色々無理を言って今回見学させて貰いました。
案内してくれたのは中村社長、最初に仰っていましたが蒸溜所を建てる時から見学してもらうことを想定して建てたということで、とても見学しやすかったです。
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で、見学の最初はウォッシュバック(発酵槽)の下部から、ウォッシュバックの下部が見られるという蒸溜所は結構少なく、実はこれは貴重な経験なのです。
そしてまずはウォッシュバックについての説明、材質は全て木製で現在は10槽、要領は約8,000リッターで4槽がオレゴンパイン(米松)製で6槽が静岡産の杉の木製だそうです。
秩父蒸溜所のミズナラ製ウォッシュバックも珍しいですが、杉のウォッシュバックというのも珍しく、それも静岡産という事でこの後も何度か話しに出てくるんですが、地元静岡愛が強いなと感じました。

~続く~

オンラインで秩父蒸溜所の吉川さんに色々聞いてみた動画

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6月にあるじの店をベースにして秩父蒸溜所オンラインツアーをやったのですがその時司会をしてくれた真壁くんが、蒸溜所を見せて頂いた後に秩父蒸溜所のブランドアンバサダーである吉川さんにオンラインを見ていただいた方達からの質問などに答えていただいた時の動画をアップしてくれたので、ここで紹介させていただきます。
後半は雑談が多くなってますが宜しければご覧ください。

Ariake Sangyo Cooperage

という洋酒用の製樽工程が見られる動画があり、これが日本の有明産業という会社のクーパレッジ(樽工場)で行なわれている樽造りの様子なんですが、こんな造り方をしているのか?というのがよく分かり、また職人の凄さも伝わってくるので、これは是非皆さんにも見てもらいたいと思い紹介させて頂きます。

Ariake Sangyo Cooperage
ウイスキー造りには絶対欠かせない洋酒樽、日本にも大手洋酒メーカー、また秩父蒸溜所以外でこれだけ本格的な樽を造れるメーカーがあると思うとなんか嬉しくなってしまいますね。

今月29日(土)にシーバスの

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あるじの店の仕入先でもある酒販店「武蔵屋」が、今月(8月)の29日(土)午後3時よりブレンデッドスコッチウイスキー「シーバスリーガル」のオンラインセミナーを開催します。
セミナーはシーバス・ ブラザーズ社のアンバサダー 、トモス・ブルックス氏がスコッチウイスキーの製造やシーバスリーガルの歴史について説明をし、今年1月に新発売となった「シーバスリーガル18年 ミズナラ カスク フィニッシュ」を含むシーバスリーガル4種の比較テイステ ィングが楽しめるそうです。
参加には参加チケットの購入が必要で且つ先着40名様までとなっています。
因みに参加チケットは¥5,000‐で、購入すると「シーバスリーガル ミズナラ12年」700mlが1本にミニチュアボトル3本セット(シーバスリーガル12年、シーバスリーガル18年、シーバスリーガル ミズナラ18年)とテイスティング用アロマグラス1個、それとミズナラノートブック1冊にテイスティングチャートが含まれているそうです。
なので自宅から参加も出来ますので、シーバスリーガル・オンラインセミナー、参加されたい方はこちらからお申し込み下さい。