あるじの小言

「あるじの店」(BAR Virgo)や洋酒(特にウイスキー)、スコットランド、まれに赤坂について書いています。

 Age statements(年数表記)

ウイスキーには○○10年とか○○12年といった年数の書いてある物がよくあります。
この年数は、そのボトルに入っているウイスキーの最低熟成年数を表すものです。
なので10年と書いてあるものであれば、もちろん10年熟成させただけの物もありますが、その多くは10年以上熟成させた原酒も入れて造られています。
これはブレンデッドウイスキー限らず、シングルモルトウイスキーにおいても同様です。
ブレンデッドと書いてあると、ブレンドしているのだからそれもそうかと直ぐに納得してもらえる事が多いのですが、シングルモルトウイスキーだと、シングルなのにブレンドしているの?と思われる方も多いようです。
これはまだまだシングルモルトウイスキーのシングルという表記について、そこから受ける印象がたぶん1つの樽をイメージしてしまう為なのかもしれません。
シングル=1つですからね!
しかし実際にはシングルモルトというのは1ヶ所のモルト蒸溜所で造られた原酒を使って出来たウイスキーという意味で、同じ1を意味してはいるのですが、それは樽ではなく蒸溜所という大きな1を表しているのです。
1つの樽からボトリングされた場合はシングルカスク(カスクが樽)と表記される事が多いです。
なのでシングルモルトの10年物でも、ボトリング毎に味が変わって以前飲んだのとは違うと言われないよう、最低10年の原酒を幾つも使って毎回同じ味わいになるようボトリングされているのです。
場合によっては10年と書いてあっても30年以上熟成させた原酒が入っている場合もあります。
そこでメーカーによっては、この年数表記の原酒しか使われていないと思われるが嫌で、これは最低年数表記なんですよ。というキャンペーンを行なったところもあるのです。
そして最近の傾向としては、年数表記をしないウイスキーをリリースする会社が増えているようです。
これには色んな理由があるのだと思うのですが、美味しいウイスキーが造れるのであれば若い原酒を入れるのもありだという考え方と、若い原酒を使う事によってボトルに表記される年数が低くなると、いくら良いウイスキーを造っても、先に書いたとおり年数表記に対する認知度が低い為、若くて熟成感が無いと思われたり、若いウイスキーなのに価格が高いと思われたりする為、それなら年数表記をはずした方が味わいで勝負出来ると考えているのもあるんじゃないかと思います。
まっ!それ以外にも、世界的なウイスキーの需要が伸びている中今まで通り年数表記のウイスキーを造っていると、原酒不足を起こす可能性もあるからなのかなとも感じました。
とにかくウイスキーというお酒は樽による熟成がとても大事なお酒で、ある程度は熟成させないとその味わいは深まらないのですが、だからといって20年30年熟成させる事が大事なのではなく、それぞれの樽でどんな熟成状態なのか、またそれぞれをどう組み合わせたら美味しくなるのかというブレンダーの腕の妙もあるので、皆さんも年数表記は1つの目安として、その長さに惑わされる事なく自分の鼻と舌でお気に入りのウイスキーを探してみてください。
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