あるじの小言

「あるじの店」(BAR Virgo)や洋酒(特にウイスキー)、スコットランド、まれに赤坂について書いています。

八郷蒸溜所

さて八郷蒸溜所、建物はもと公民館だったものを改築して蒸溜所に改築されたとの事で、メインの蒸溜棟の他にミルハウス(麦芽粉砕棟)と貯蔵庫が2棟、それと蒸溜所前にはどう活用するか検討中というコンテナが幾つか在ります。
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ということで先ず見学させて頂いたのはミルハウス、ミルマシーン(麦芽粉砕機)が2台あり1つは最近良く見るアランラッドのモルトミルAR2000(写真左)、秩父蒸溜所で使っているのと同じ物で、もう1台はKUNZEL(写真右)というミルマシーンでビールメーカーがよく使っている物だそうで、麦芽以外の穀物も粉砕出来るそうです。
また粉砕比率もコンピューター制御でアランラッドより正確で素早く、粉砕速度も圧倒的に速いそうです。
なるほど!このあたりはビール事業で成長した会社らしいなと思いました。
f:id:barvirgo:20210130132129j:plain:left:w280で、ミリング(麦芽粉砕)の次はマッシング(糖化工程)なので蒸溜棟に戻るのですが、そこには左の写真にあるステンレス製のタンクが数本あり、これは何かと伺ったところ酵母を自家培養する設備ということで八郷では酵母も自家製、しかもウイスキー用はもちろんビール酵母などなど幾つものタイプの酵母を作り色々と試しているんだそうです。
なるほど2週間ずつレシピを替えて造り分けしているという訳です。
f:id:barvirgo:20210130131642j:plain:left:w280そしてマッシュハウス(糖化室)に、マッシュタン(糖化槽)は最新式でここでもコンピューター制御、しかも通常のモルトウイスキー蒸溜所だと投入するお湯は2回から4回と複数回に分けて入れるのですが八郷では1回だけと、あるじ的には幾つも蒸溜所を周って来ましたが初めて聞く話なので結構ビックリしました。
またそれで充分に糖分を回収出来るのか伺ったところ最新式のマッシュタン、内部でお湯の温度を上げる事が出来るので十分に糖分は回収出来るそうです。
もう本当ビックリです!
f:id:barvirgo:20210130132555j:plain:left:w280そしてタンルーム(醗酵室)に、タンルームには木製のウォッシュバック(発酵槽)が4槽、容量的には6,000リットルでイタリアのGarbellotto製で材質はアカシア2槽とパインが2槽だそうです。
そしてこのウォッシュバック写真を見て貰うと分かるんですが天井ぎりぎり、中の様子も見られないし中の掃除に人も入れないと思ったら、なんと中に洗浄マシーンが入っていて機械が綺麗に洗ってくれるんだそうです。
またスイッチャー(泡切り)は無く、発酵中に発生する二酸化炭素はウォッシュバックに繋げられたパイプを通し建屋の外に排出出来るようになっているんだそうです。
もう見た目は今まで見てきたウォッシュバックに似てますが、構造があまりにも違うのでここでもビックリしてしまいました。
また建物の外にステンレス製のウォッシュバックが4槽あり、これは容量が12,000リットルと大きくて中に入らなかったので外に置いてあるそうです。
で、これらのウォッシュバックを使って発酵にかかる時間は4日から7日程度、もろみのアルコール度数は8~10%ぐらいだそうです。
まあ気温に湿度に酵母に木桶、はたまたステンレスと組み合わせが変われば発酵時間や得られるもろみのアルコール度数が違うのは当たり前なので、この辺は想定内ってところです。
f:id:barvirgo:20210130133200j:plain:left:w380さ~て、発酵が済んだら蒸溜です。
スティルハウス(蒸溜室)に移動すると2基のポットスティル(単式蒸溜器)、スコットランドフォーサイス製、ストレートヘッドで少し下向きのラインアームなのでボディのしっかりしたタイプの原酒が造れる感じです。
これで1回目の蒸溜でアルコール度数が約20%に、そして2回目の蒸溜で約67%のニューポットを得ているそうです。
とはいえまだまだ蒸溜でも色々試している感がありました。
また写真では分からないのですが、シェル&チューブのコンデンサー(冷却器)が1つのポットスティルに対して2つ付いていて、ポットスティルのすぐ脇にある縦型のコンデンサーである程度液化した後にこのスティルハウスの下に横置きのコンデンサーがあり、これでしっかり蒸溜液を液化しスピリットレシーバーに送り込んでいるそうです。
1基のポットスティルに対して2基のコンデンサー、このあたりも珍しいなと思いました。
f:id:barvirgo:20210130134420j:plain:left:w275f:id:barvirgo:20210130134551j:plain:right:w275で、蒸溜されたニューポットを樽詰めするフィリングストア(樽詰め所)を見せてもらい、その後ウェアハウス(貯蔵庫)を見せてもらいました。
そしてここでも樽の置き方に拘りがあり、立てているもの横置きのもの色々あるなと思ったら、それぞれ入手する前に使われていた時の状況に応じ、縦置きで使われていた樽なら縦置き、横置きで使われていた樽なら横置きにしているのだそうです。
そうするともともと使われていた状況と同じなので、漏れが殆んど無いそうです。
なるほどな~、理に適っているなと思いました。
まあこれで見学としては一通り終了です。
この後はテイスティングルームであるじに付き合ってくれた皆はテイスティング、木内副社長色々と飲ませてくれました。
あるじにはお土産のサンプルウイスキーもくれましたしね。
本当にありがたく嬉しかったです。
またお伺いした時は決まっていなかったのですが、ジャパニーズウイスキーの定義が年内には必ず決まると仰っていて、木内酒造が造るウイスキーについてはその定義が決まってからそれに添った形のものをリリースする、まがい物や怪しいウイスキーは造らないと強く仰っていたので、もうしばらく先にはなると思いますが、木内酒造のウイスキー、そして八郷蒸溜所のウイスキーがリリースされる日が来るのがとても楽しみだと思いました。
そして最後、今回あるじは皆さんより先に見学させて頂きましたが八郷蒸溜所、今年のゴールデンウィークから一般の皆さんの見学も受け入れる予定だそうです。
八郷蒸溜所の近くに茨城フラワーパークという公園があり、この公園に行く石岡駅からの循環バスが、八郷蒸溜所にも寄ってくれるそうなのです。
なので石岡駅まで電車で行き、茨城フラワーパーク行きの循環バスに乗れば八郷蒸溜所に見学に訪れることが出来るそうです。
なので今はまだ見学についての告知はありませんが、八郷蒸溜所のサイトを時々チェックして、見学の案内が出たら申し込んで訪れてみてください。
他のウイスキー蒸溜所を見学に訪れた事のある方も初めての方も、きっと楽しめると思います。