あるじの小言

「あるじの店」(BAR Virgo)や洋酒(特にウイスキー)、スコットランド、まれに赤坂について書いています。

鹿児島蒸溜所巡り ~3~

f:id:barvirgo:20201102101918j:plain:right:w380さて嘉之助蒸溜所、製造設備は全て三宅製作所、国内のメーカーです。
ウイスキー造りの蒸溜設備、本場スコットランドフォーサイスなどのメーカーもありますが、嘉之助では今まで行なっていた焼酎造りの技術が生かせ、かつ設備に関してこうして欲しいなどの細かいニュアンスを伝えられる日本のメーカーの方が良いと判断し、全てを三宅製作所にしたそうです。
それで製造、嘉之助蒸溜所のミリング(麦芽粉砕)部分は壁の向こう側と言われ残念ながら見られませんでした。
なのでマッシング(糖化工程)から、右の写真がマッシュタン(糖化槽)の中を覗いた写真、糖化が終わったところでドラフ(麦芽かす)が残っているのが見られました。
ここでは得られる麦汁は5,600リッター、糖度は約20%だそうです。
ちなみにマッシングの際投入されるお湯は3回で、1回目が69度、2回目が70~71度、そして3回目が85度だそうです。
ただ、他の多くの蒸溜所が3回目のお湯は次のマッシングの1回目に使用するところ、嘉之助では取りきり、全てウォッシュバック(発酵槽)にまわしているそうです。
これは静岡蒸溜所と同じような理由で、3番麦汁を溜めておくタンクを置く場所がないからだそうです。
但しこれはイースト(酵母)タンクを動かすなどすれば場所を作ることは出来るそうで、今後どうするか検討中だそうです。
f:id:barvirgo:20201102102755j:plain:left:w380そして発酵工程に、写真の床から顔を出しているのがウォッシュバック、木製ではなくステンレス製を使用しています。
そして使っているイーストはアメリカのMWやスコットランドのピナクルなどまだ若い蒸溜所、色々試してもいるそうです。
で、発酵にかかる期間は約5日、アルコール度数約7%の麦汁が得られるそうです。
またウォッシュバックがステンレスで木製のウォッシュバックのような乳酸発酵は起こらないので、今後ウォッシュバックの中に木材を入れて乳酸発酵が出来ないか、そんなことも試そうと考えているとの事で面白いなと思いました。
これからの蒸溜所なんだから本当に色々と試さないとね!
という訳で今回は発酵まで、蒸溜からはまた後日書きます。

鹿児島蒸溜所巡り ~2~

f:id:barvirgo:20201102100619j:plain:right:w380さて、それでは嘉之助蒸溜所の見学です。
嘉之助蒸溜所は現在コの字型の建物になっていて、コの字の奥がレセプション、受付やショップになっています。
なのでまずはそこで受付をします。
それから見学がスタート、いったん建物の外に出て正面左側のコの字の先端で蒸溜所の概要について伺います。
なぜ嘉之助蒸溜所というの名前なのか?どうしてこの場所に在るのか?などですが、このあたりの話はここでは省略して、あるじが関心を持ったのは、嘉之助蒸溜所が当初は小正醸造芋焼酎造りの合い間に生産するつもりで、コの字の真ん中部分にはボトリングホールを建てる予定でいたのをウイスキー需要の多さから、生産自体も昨年から通年で行なう方向へ舵を切り、そうなると現在の蒸溜所では手狭になるのと小正の本業の場・日置焼酎蔵でもウイスキーの製造免許を取ったそうで、ボトリングはそちらの焼酎蔵でやることにしたというのと、焼酎蔵の方でグレーンウイスキーの製造を始めたって事です。
モルトもグレーンも造るのですから完全自社のブレンデッドウイスキーが造れるという事で、これはクラフトウイスキーの雄・秩父蒸溜所でもやっていないので将来楽しみと思いました。
ということでコの字の真ん中には追加の貯蔵庫やタンクが何れ設置されるとの事です。
そんな現在の状況等を伺った後は蒸溜所内に入ります。
蒸溜所内に入ってからもまずは小正醸造の歴史や蒸溜所の名前にもなっている小正醸造の2代目、小正嘉之助氏が米焼酎を樽で熟成させて造った「メローコヅル」の話など伺います。
この樽で熟成させる米焼酎「メローコヅル」が、今の嘉之助のウイスキー造りに繋がっていくっていうのはちょっと感慨深いものがあるなと思いました。
またウイスキー造りに挑戦することを決めた時の苦労や、あるじ的にはウイスキー造りを学んだのがスコットランドのストラスアーン蒸溜所だったというのもとても興味深くやはり実際に足を運んで見て聞かないと駄目だなと思いました。
そして現在の製造について伺います。
現在は1日1トンのモルトを仕込んでいるそうです。
使用しているモルトは英国産で、メインはマントン社というモルトスター(製麦会社)で、その他にクリスプ社、また現在コロナの影響でモルトの入荷が遅れたりと安定しないのでリスクヘッジもあり、ポールズモルト社やベアーズ社などからも仕入れているそうです。
また現在は11ヶ月の稼動で今年から8月の1ヶ月がメンテナンス、そして9月から1ヵ月半ほどピーテッドを仕込んだそうで、その際使用したピーテッドモルトシンプソンズ社製なのだそうです。
メンテナンス後にピーテッドを仕込むのはと思いましたが、その後話を聞くと色々と納得の理由があり、それはここで書くと長くなるので興味のある方は是非嘉之助蒸溜所へ訪れ伺ってみてください。
そしてここから製造の本番、ですがまた長くなってしまうので続きはまた後日書かせて頂きます。

鹿児島蒸溜所巡り ~1~

f:id:barvirgo:20201102102755j:plain:right:w380あるじ今月(11月)の1日(日)から2泊3日で鹿児島を訪れ、2日の日(月)に鹿児島県内のモルトウイスキー蒸溜所を含む3つの蒸溜所を見学させて頂きました。
お天気は雨と残念ではありましたが、やはり実際に酒造りの現場を見せてもらうのは、勉強にもなりますし造り手の想いが感じられて凄く参考になりました。
そこで今回も数回に分けて見学させていただいた蒸溜所の話を簡単に書いていきますので、宜しければお読みください。
まずあるじが最初に訪れたのは嘉之助蒸溜所、焼酎メーカーの小正醸造が2018年にスタートさせたウイスキー蒸溜所です。
案内をしてくれたのは蒸溜所所長の中村氏、とても丁寧に案内をしてくださいました。
まずは心より感謝御礼を申し上げます。
本当にありがとうございました。
という訳で嘉之助蒸溜所、鹿児島県の西部・東シナ海に面する日置市、あるじの運転で鹿児島市内から車で約40分ほどの場所にあります。
見学に訪れた時に試飲がしたいというのであれば、鹿児島市内の鹿児島中央駅からJR鹿児島本線に乗り、「伊集院」という駅で折りそこからタクシー乗ると15分ほど、鹿児島市内からだとやはり約40分程度で訪れることが出来るそうです。
そして見学料は1,000円、今はまだ蒸留所が出来て3年経っていないので、ニューメーク・ニューボーンの合わせて3種類のテイスティングが付くようです。
但し、来年になると3年経つのでもしかするとテイスティングの内容は変わるかもしれません。
またショップで3,000円以上のお買い物をすると見学者は500円割引もしてくれます。
などちょっと遠い場所にある蒸溜所ですが、機会があれば是非皆さんも見学に訪れてみてください。
という事で見学の詳しい内容や申し込みについてはこちら嘉之助蒸溜所のサイトをご覧ください。
それでは見学して伺った話、へと進みますがそれはまた後日、暫くお待ちください・・・

【YouTube Live】山崎蒸溜所&白州蒸溜所オンラインツアー

f:id:barvirgo:20180520134902j:plain:right:w380もともとの予定であれば今月から再開する筈であったサントリー山崎蒸溜所&白州蒸溜所の見学ツアー、結局いまだ再開されずその替わりなんでしょう来月15日(日)に両蒸溜所のオンラインツアーを開催するそうです。
白州蒸溜所がまず先で13:00~13:50、山崎蒸溜所がその後15:30~16:20で共にYouTube にてオンライン配信されるそうです。
また共に今月いっぱいは録画配信もされるそうですが、ライヴ配信中はチャット機能を使ってご覧になる皆様の質問にも幾つか答えてもらえるそうです。
でこのオンラインツアー、参加費は無料ですがやはりお酒関連なので20歳以上の方のみの参加となるそうです。
という訳で詳しい内容や注意事項、参加方法は山崎蒸溜所がこちら、白州蒸溜所がこちらとなりますのでなかなか見学に行けない今、オンラインだとどこまで見せていただけるのかも含めサントリーの両蒸溜所、ちょっと覗いてみては如何?

シークレットスペイサイド コレクション オンラインセミナー

f:id:barvirgo:20201022133213j:plain:right:w380というセミナーが、10月31日(土)15時から先着40名で開催されます。
今回「シークレットスペイサイド」と呼ばれているのはペルノ・リカール社傘下の蒸溜所で、その中から先月日本でもリリースされた「ロングモーン」と「キャパドニック」、それとグレンキースにブレイズ・オブ・グレンリベットの 4蒸溜所について説明をしてくれて、且つ「ロングモーン」と「キャパドニック」のサンプル合わせて6種類が試飲出来るオンラインセミナーだそうです。
参加費は6,000円だそうですが、最低でも18年熟成のシングルモルトウイスキーを6種類試飲出来るので、悪くないセミナーなんじゃないかと思います。
まあ実際すでに半数以上参加チケットも売れているみたいですしね。
なのでこのシークレットスペイサイド コレクション オンラインセミナーに参加されてみたいという方は、こちら「Peatix」のサイトに詳しい内容が記載されてますし、また申し込みも受け付けていますので、宜しければチェックしてみてください。
但し、チケットが売り切れている可能性もございますのでその際はご容赦を・・・

ガイアフロー静岡蒸溜所見学に行って来た! ~その4~

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麦芽粉砕、糖化、発酵の工程と見せていただき今度は蒸溜所見学最大のポイント蒸溜工程です。
ガイアフロー静岡蒸溜所には蒸溜器が4基設置されていました。
メルシャン軽井沢蒸溜所で使われていたポットスティル(初溜用)、そしてスコットランドフォーサイス社に依頼して建造してもらったという薪を使った直火蒸溜のポットスティル(初溜用)、そして同じくフォーサイス社製で再溜用のポットスティル、また今現在は使っておられないそうですがドイツ・ホルスタイン社製のハイブリットスティルの4基で、やはり注目は初溜用の薪直火蒸溜器に軽井沢から持ってきた蒸溜器ですね。
まず直火蒸溜は行なっている蒸溜所自体少ないですし、直火蒸溜をしているにしてもニッカ余市蒸溜所の石炭直火以外はまずガスを使っていますから、まきを使用するというのは本当にチャレンジだと思うので、ここから生まれる原酒、そして将来のウイスキーが楽しみです。
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またいまや幻のウイスキーと化した「軽井沢」を造っていたメルシャン軽井沢蒸溜所のポットスティル、オークションで落とした時には4基あったそうですが結局使えたのは1基と聞いていて実際1基なのですが、これは実は4基あったポットスティルの使える部分を合体させて出来た1基だそうで、これはある意味軽井沢の設備を一式すべて買い取ったのは正解だったんだなと感じました。
そしてこの軽井沢ポットスティル、静岡蒸溜所の仕込み量からするとちょっと小さめの3,500リッターの容量なので、このスティルで蒸溜する際は2日に分けて(現在は1日1仕込の為)行なっているそうです。
で、こうして薪直火と元軽井沢の初溜釜で蒸溜された原酒をフォーサイス社製の再溜釜で蒸溜することで、約7~8%だったウォッシュ(もろみ)のアルコール度数が約70%ほどに上がり、イーストを加えておよそ6,000リッター近かった原酒の量は500リッターほどのニューポットと呼ばれるモルトウイスキー原酒なるそうです。
そしてこのアルコール度数約70度のニューポットに少し水を加えアルコール度数63.8%、500リットルが約550リットルにしたもの(ニューメークスピリッツ)が樽に詰められるそうです。
なので1日でおよそバーボン樽にして3樽弱を現在は仕込んでいるって感じでした。
ただ仕込み量は今後増えていくと思うので、あくまでこれは現状の数字だと思って下さい。
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それから見学としては最後のウェアハウス(貯蔵庫)へ、ウェアハウスは現在2棟あるとの事で見学させて頂くのは第2貯蔵庫、第1はダンネージ式といわれる貯蔵スタイルだそうですが、見せて頂く第2の方は写真の通りラック式といわれる貯蔵スタイルになっています。
またこのウェアハウス、写真だと分からないのですが天井に窓が幾つもあり、光が入るので通常のウェアハウスより庫内温度が上がるし、高低差もあるので樽の置いてある場所でかなり熟成環境が変わることが考えられ、樽の種類は殆んどバーボン樽中心ではありますが、熟成期間は変わらなくても熟成が早いものや熟成度合いの違う原酒が造れて、製品化する際には熟成年が若くても結構複雑味のあるシングルモルトウイスキーが造れる気がして、製品化されるのが楽しみになりました。
という訳で見学の後は試飲やお買い物、または見学中に聞けなかったことなどお伺いをし、ガイアフロー静岡蒸溜所の見学を終えました。
ガイアフロー静岡蒸溜所の中村社長及びスタッフの皆様、また今回の蒸溜所見学ツアーに参加くださった皆様、新型コロナの影響もあって日程が変わるなどご迷惑をお掛けしましたが素晴らしい蒸溜所見学が出来たこと、あるじ心より御礼を申し上げます。
本当にありがとうございました。

ガイアフロー静岡蒸溜所見学に行って来た! ~その3~

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静岡蒸溜所見学、大麦麦芽(モルト)の粉砕工程を伺ったら次は糖化工程、静岡蒸溜所は導線がとても良く壁1枚挟んで直ぐ隣りにマッシュタン(糖化槽)が設置してありました。
ちなみにマッシュタンは日本の三宅製作所製、それで1回の仕込みにモルト1トン使うそうですがそれに対しお湯を2回加えて麦汁を取るそうです。
f:id:barvirgo:20200913131934j:plain:left:w380因みに1回目のお湯は4,000リッター、温度は75~80度、そして2回目が2,000リッターで温度は90度弱だそうです。
また静岡蒸溜所では珍しく3回目のお湯は投入しないそうです。
多くのモルトウイスキー蒸溜所では3回乃至4回投入しているので、これは珍しいです。
まあ他の蒸溜所では3回目4回目のお湯で少しでもモルトの中に残っている糖分を回収して次の仕込みの1回目に投入するお湯として使うため投入するのですが、当然そのお湯を次に使うために回収したお湯を溜めておくタンク等が必要になるのがその貯水タンクを置く場所を設けられず、3回目のお湯は投入していないのだそうです。ただそれでも糖分の回収率は悪くないそうです。
そして取れる麦汁は約5,200リッター、これを温度を落としてウォッシュバック(発酵槽)に張り込むそうです。
f:id:barvirgo:20200913132535j:plain:right:w380という訳で糖化工程の説明を伺った後は再びウォッシュバックの置いてある部屋(タンルーム)へ、蒸溜所見学の最初ではウォッシュバックの下部を見せて頂きながらウォッシュバックそのものの説明を伺いましたが今度は発酵工程について伺います。
発酵の為に使用しているイースト(酵母)はイタリア産のドライイースト、量としては2.5~10Kgと状況に応じて結構変えているそうです。
またオレゴンパイン(米松)製のウォッシュバックで発酵させたウォッシュ(もろ味)は元・軽井沢蒸溜所から引き取ったポットスティル(蒸溜器)で、そして静岡の杉で出来たウォッシュバックで発酵させたウォッシュは直火釜のポットスティルで蒸溜しているそうです。
それと発酵の時間は約36時間、それでおおよそ7~8%のアルコール度数になり、そこから木製のウォッシュバック特有の乳酸発酵が始まりトータルで3~5日発酵にはかかるそうです。
また乳酸発酵に関しては他の蒸溜所ではあまり説明されないウォッシュのペーハー値で発酵の度合いを判断しているという話を伺い、ペーハー値が大事なのかと改めてウイスキー造りの面白さを感じました。
てなところでまた長くなってしまったので、蒸溜からはまた後日・・・