あるじの小言

「あるじの店」(BAR Virgo)や洋酒(特にウイスキー)、スコットランド、まれに赤坂について書いています。

キルケランのセミナー、続き

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さて、先日はキルケランの製造工程でスプリングバンク蒸溜所で行なっている部分まで書きましたので、これからはグレンガイル蒸溜所での工程ミリングから書いていきます。
さてミリングは発芽した大麦(モルト)を粉砕する工程ですが、グレンガイルに限らずモルトウイスキーを製造している殆どの蒸溜所がモルト仕入れて、このミリングの工程から行なっています。
まだグレンガイルは系列会社(スプリングバンク蒸溜所)でモルティングまで行なっているので、より自分のところで一から造っている感があります。
そんなミリング、ミルマシン(麦芽粉砕機)はVickersという会社の物を使っているのですが、グレンガイル蒸溜所を造る際になるべくお金を掛けずにという事で、なんとクライゲラヒー蒸溜所からただで貰ったのだそうです。
ポットスティルは貰った物だと聞いてはいましたがミルまで貰っていたとは・・・、ちょっとビックリです。
そしてマッシング(糖化工程)、これは今回細かい説明を聞くのを忘れてしまい申し訳ないのですが、時間としてはだいたい7~8時間掛けて行なっているそうです。
でファーメンテーション(醗酵)は色々試している部分もあると仰っていましたが、約110時間とかなり長めにとって行なっているそうです。
またウォッシュバック(醗酵槽)は木製、ラーチ(カラ松)と言っていたので、ちょっと珍しい系の材です。
木製のウォッシュバックだとその多くはオレゴンパインやダグラスファーと呼ばれる米松製のところが多いですからね。
f:id:barvirgo:20160502114406j:plain:left:w380そして蒸溜、使用しているのは先にも書きましたが貰ったポットスティルで、グレーンウイスキー、インバーゴードン蒸溜所内に1965年から1977年まで在ったベンウィヴィス蒸溜所から貰い受けたもので、その事自体はあるじも聞いて知っていたのですが、なんと貰ってきた時とは形が違うのだそうです。
ベンウィヴィス時代はもっと角ばった(スクウェアと仰っていた)スティルだったそうで、それをグレンガイルで造りたい酒質を考え改造し、ラインアームも下向きだったものを上向きにしたのだそうです。
まさかポットスティルの形を変えていたとは・・・、これもちょっとビックリしました。
そしてあるじが3年前訪れた時は製造している期間は6週間と言っていて驚いたんですが、昨年から3ケ月に製造期間も伸びたそうです。
なのでまだ少ない事は少ないですが、年間の生産量が10万リットルとなったそうです。
それと製造する時期は基本スプリングバンク蒸溜所が落ちついている時期になるそうで、何時から何時とは決まっていないそうです。
それはスプリングバンク蒸溜所で働いているスタッフがそのままグレンガイルでも製造に携わっているからだそうで、要はスプリングバンクが暇な時じゃないと造れないって事のようです。
あとセミナーで試飲をさせて頂いたものにヘヴィリーピーテッドがあったのですが、これは3年前から仕込みを始めたそうで、ピートの染みこみ加減を表すフェノール値は84ppmとかなり高いのですが、香り的にはそこまで強烈ではなく、どちらかというとピート由来のスモーキーさは余韻で長く楽しめる感じでした。
またこのフェノール値に関しては今回たまたま84ppmになったそうで、ピートを強く焚きこもうとは思ったそうですが、何ppmに使用とは決めていないそうで、次のリリース時も84ppmになるとは限らないそうです。
そんな「キルケラン」のヘヴィリーピーテッド、日本でも発売を予定しているそうで、ローナン氏はセッテンバーと言っていましたが、ウイスク・イーが9か10と言っていたので、9月か10月になるようです。
そして製品名は「ピート・イン・プログレス」、現在リリースされている「キルケラン」が12年物を出すまで「ワーク・イン・プログレス」といって年に1回ずつリリースしていた手法を踏襲するそうです。
なので熟成が進むとピーテッドの場合はどう変化するのか?毎年買って飲み比べると楽しいかもしれませんね。
あとあるじがこれは知っておくと豆知識としてありだなと思ったのは、グレンガイル蒸溜所を訪れると蒸溜所の外壁に小窓があり、そこからキャンベルタウンの街の教会を望んだ様子が「キルケラン」のラベルのマークになっているのは実際に見せてもらって知ってはいましたが、この外壁、たんなる外壁ではなく今は無きオリジナルの蒸溜所のウェアハウス(貯蔵庫)の壁だったんだそうです。
こんなところで昔と今が繋がっているのが素敵だとあるじは思いました。
因みにトップに貼ってある写真はあるじが撮った写真ですが、実際に見るともっと教会の尖塔部分は大きく「キルケラン」のラベルみたいに見えます。
まあこれで全てではないのですが、だいたいこんなところが今回のセミナーで聞いてきた話となっています。
まあまだまだ造っている量が少なく、なかなか皆さんのお手元にって訳には行かないシングルモルトウイスキーかもしれませんが、なかなか良いウイスキーなので是非皆さんも機会があれば飲んでみてください。