あるじの小言

「あるじの店」(BAR Virgo)や洋酒(特にウイスキー)、スコットランド、まれに赤坂について書いています。

 ベンチャーウイスキー秩父蒸溜所見学 −2−

barvirgo2012-10-25

少し間が開いてしまいましたが、今日は前回の続きで秩父蒸溜所のウイスキー製造に関して聞いて来た話を書かせて頂きます。(但し、マッシング(糖化)まで・・・)
現在秩父蒸溜所では、秩父産の大麦を使って実験的にウイスキー造りはしているものの、あくまで実験的なものであって、実際のウイスキー造りにはスコットランド産、イングランド産、ドイツ産のモルト(大麦麦芽)を使用しているそうです。
先日あるじがお伺いした時にはイングランド産(クリスプ社)のモルトを使っていました。
そして1回のミリング(モルトの粉砕)が400kgで、粉砕したモルトの状態をグリストといい、ハスク、グリッツ、フラワーというおおよそ3つの大きさに粉砕しているのですが、その比率は2:7:1と言ってはいるが、モルトの種類や気候によってその比率も変わるそうです。
なので毎回状態を見ながら調整しているそうです。
そして訪れた時はノンピートのモルトを仕込んでいましたが、秩父蒸溜所では夏の約2ヶ月メンテンナンスシーズンで製造しない時の直前約1ヶ月はヘビリーピートのモルトを仕込むそうです。
これは、ピートを焚いたモルトを仕込んだ後にノンピートのモルトを仕込むとノンピートなのにスモーキーな仕上がりになってしまうからだそうです。
そしてヘビリーピートのモルトに関しては、スコットランドモルトスター(製麦工場)にフェノール値を指定するのではなく、キルニング(ピートによる乾燥)を3日間フルにやってもらう様にオーダーしているそうです。
なので、使用しているピートのフェノール値は51〜59.6ppmの物を使っているそうです。
そして粉砕されたモルトをマッシュタン(糖化槽)にお湯と合わせて投入しますが、その時にお湯は3回に分けて投入し、それぞれ投入する際のお湯の温度も違うそうです。
先ずモルトと合わせて投入される際(1回目)のお湯の温度は64度で1,700Lだそうです。
そして30分経つと粉砕したモルトのハスクの部分が沈殿し自然の濾過槽になり、またモルト自身の持つ糖化酵素が働きマッシュタンの中の麦汁の澱粉が糖分に変わるそうです。
で、マッシュタンの中に出来た甘い麦汁を取り出すそうですが、このときのバルブ操作が難しく気をつけないと上手く取り出せないそうです。
そして取り出した麦汁を2時間ほど掛けて20度まで温度を下げ、それから(ウォッシュバック)醗酵槽に移すそうです。
このとき取り出せる麦汁の量はだいたい1,000Lだそうです。
そしてマッシュタンの方には2回目のお湯を投入するそうですが、その際のお湯の量は約1,000Lで温度は76度だそうです。
このときのお湯はスパージングといってシャワー状にして投入するそうです。
そうする事で熱いお湯が蓋状になり、マッシュタンに残ったモルトの糖分を効率よく取り出せるそうです。
そうしてからまた麦汁を丁寧に濾過しながら取り出し、2時間掛けて温度を20度まで下げ、1回目に取り出した麦汁と合わせて2,000Lになったら取り出すのを終了するそうです。
そしてマッシュタンには3回目のお湯を投入するそうですが、お湯の温度は96度、1,250L使用するそうです。
でこれもスパージングして投入するそうですが、ゆっくり取り出すのではなく直ぐに濾過して熱いお湯のままマッシュタンに残った1〜2%の糖分をお湯で洗い流して取り出し、次のマッシングの際に使用するそうです。
これは糖分を無駄なく取り出す為で、このお湯も大事な原料だそうです。
そしてマッシュタンに残ったドラフ(麦芽カス)は牛の餌としてエサヤさんに引き取ってもらっているそうです。
長くなってしまったので醗酵からはまた次回・・・
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