あるじの小言

「あるじの店」(BAR Virgo)や洋酒(特にウイスキー)、スコットランド、まれに赤坂について書いています。

 ベンチャーウイスキー秩父蒸溜所 2015冬 〜その2〜

barvirgo2015-12-10

さて秩父蒸溜所見学の本番です。
製造棟内で製造工程について教わります。
あるじ的には何度も訪れているので知っている事もありますが、結構新たな発見もあったりして学ぶことは多いです。

という訳で製造工程では先ずマッシング、糖化について説明をしてもらいます。
糖化はミルルームで砕いた麦芽(グリスト)に64°のお湯を加えマッシュタン(糖化槽)に入れ約30分静置するそうです。
こうする事でグリストが持つ澱粉が糖に変わった麦汁がマッシュタンの下から出て来るそうで、それを熱交換器(右上写真)で冷やしウォッシュバック(醗酵槽)に張り込むそうです。
64°のお湯と混ぜるのは、モルトの糖化酵素がよく働く温度だからだそうです。
また糖化では3回のお湯が使われるそうです。
これは1回のお湯だけでは糖化した糖分を全て取り出すことが出来ないので、1回目の時より2回めでは76°、3回目では96°と温度を上げてお湯を上から入れてあげる事により、水の温度差の比重の違いを利用し糖分を無駄なく取り出す為なんだそうです。
で、こうして取り出した麦汁のうち1回目と2回目の麦汁合わせて2,000リッターをウォッシュバックに張り込み、3回目は1〜2%の糖度を持つお湯になっているそうですが、これは次回のマッシングの1回目に使われるそうです。
そしてウォッシュバックに張り込んだ麦汁の糖度は14%以上になっているそうです。
また麦汁を取った後の麦芽滓をドラフといい、これは家畜の餌として引き取ってもらい、大麦は無駄なく使用されるそうです。

こうしてマッシングのよって得た麦汁に今度は酵母を加え醗酵させる工程に移ります。
秩父ではマッシングで得た麦汁2,000リッターに対し10キロの酵母を加え足掛け4日醗酵させ、アルコール分約7%の醗酵モロミ(ウォッシュ)得ているそうです。
でここ秩父では、有名な話ですが世界でここだけというミズナラ材のウォッシュバックを使っています。
木製のウォッシュバックというだけでもメンテナンスが大変なのに、漏れやすく加工の難しいミズナラ材を使っているところなんかはとても拘りを感じますよね。
また秩父では醗酵に使っている酵母は1種類だそうで、これは原料の大麦の品種が変っても変えることは無いそうです。

そして醗酵が終えるとウイスキー造りの花形工程、蒸溜です。
秩父蒸溜所では初溜・再溜とも2,000リッターのポットスティル(単式蒸留器)を使って蒸溜しています。
初溜・再溜2基のポットスティルを使っているので当然ですが2回の蒸溜を行なっていて、最初初溜釜に張り込んだ2,000リッターのウォッシュは2回目の蒸溜で樽詰めにまわす部分としては200リッター、アルコール度数でいうと約70%程度のものを取り出すそうです。
これは2回目の蒸溜の時、蒸溜して出てきた蒸溜液を3つのパート、フォアショット、ハート、フェインツに分け、ハートの部分だけを樽詰めに回し、フォアショットとフェインツは次の蒸溜に回すからです。
秩父ウイスキーとしてより良い部分だけを熟成に回す為にハートの部分を絞っているのでしょうが、ここまでハートを絞る蒸溜所をあるじは今まで見たことも聞いたことも無いんですよね。秩父かなりの拘りです。
また秩父の目指すウイスキーの味わいはこのポットスティルの形にも表れているそうで、小さくてストレートヘッドでラインアームが下向きというのは、ヘヴィーでリッチなウイスキーを造りたいからなんだそうです。
本当にそこかしこに拘りが感じられますよね。
で、また長くなってしまいましたので、もう少し続きはあるのですが、それはまた後日・・・

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