あるじの小言

「あるじの店」(BAR Virgo)や洋酒(特にウイスキー)、スコットランド、まれに赤坂について書いています。

ウエストランド・アメリカンシングルモルトウイスキー ~2~

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さて、アメリカンシングルモルトウイスキーウエストランド」についてですが、前回は原料の大麦について基本5種類使用している事、ピーテッドの場合はスコットランド・ベアード社でフェノール値55ppmに焚き込んだモルトを輸入して使っているというところまで紹介させて頂きました。
という事で続きを・・・
先ずは仕込み水、仕込み水はシダー川という川の水で軟水だそうです。
そして発酵用の酵母はベルジャン・セゾン醸造酵母というのを使用しているそうです。
これは色々な酵母を試して決めたそうですが、これには地域性が出ていてワシントン州シアトル辺りはクラフトビールメーカーも多いらしく、それらクラフトブルワリーで使っている酵母から選んだそうです。
そして造りに関しては基本2回蒸溜のスコッチやジャパニーズと同じ方式、しかし使っているのはハイブリットスティルで、通常の2回蒸溜でハート(樽詰めに回す)の部分を取り出すのは一緒ですし、ヘッドとテールを次の蒸溜に回すのも一緒ですが、なんとスペントリース(再溜釜に最後まで残った部分)にも取り出したい成分があるということで何回かの蒸溜で集まったスペントリースをハイブリットスティルならではのプレートを入れた(連続式蒸溜機)状態で蒸溜し、欲しい成分を取り出しているそうです。
って、この部分は文章では分かりづらいので詳しく知りたい方は聞きに来て下さい。
で、取り出すニューメークのアルコール度数は平均で70%(75%~65%)、フィリング(樽詰め)はヴァージンオークに詰める場合は55%まで加水し、リフィル樽やバーボン樽・シェリー樽に詰める時は63%と少しだけの加水にしているそうです。
それで熟成は最低3年、特に熟成年数を決めているわけではないそうですが、シアトルの気候は比較的冷涼でケンタッキーのように熟成が早いわけでもないのでそうなっているそうです。
因みにウェアハウス(貯蔵庫)はダンネージ式で、アメリカ・カナダでは空調の入ったウェアハウスもありますが、ウエストランドでは空調は入れていないそうです。
そして熟成樽、もちろんバーボン樽やシェリー樽も使っていますがメインはヴァージンアメリカンオーク樽2種類で、1つはクーパーズ・セレクト・ヴァージン・アメリカンオーク、もう1つはクーパーズ・リザーヴ・ヴァージン・アメリカンオークという樽だそうです。
クーパーズ・セレクト・ヴァージン・アメリカンオークにクーパーズ・リザーヴ・ヴァージン・アメリカンオーク、なんて言われてもどんな樽だか分かりませんよね。
なのであるじも聞きました。
まずクーパーズ・セレクト・ヴァージン・アメリカンオークですがこれは樽材を18ヶ月自然乾燥させ、チャーリングレベル(焼き加減)#3のミディアムヘヴィーチャーした容量180~200リットルの樽。
そしてクーパーズ・リザーヴ・ヴァージン・アメリカンオークは、自然乾燥24ヶ月でロングトーストしてそれからチャーをするんですが、チャーリングレベルは#1のライトチャーにして容量はやはり180~200リットルの樽だそうです。
そしてこれらのたるで最低3年熟成させた原酒を組み合わせ、現在は「アメリカン・オーク」、「シェリー・ウッド」、「「ピーテッド」の3種類をリリースしているそうです。
また前回アメリカンシングルモルトウイスキー・コミッションという団体があると書きましたが、ウエストランドも加盟しているこの団体ではアメリカンシングルモルトの定義を6つ(①、1つの蒸溜所 ②原料は100%モルト ③製造からボトリングまで全てアメリカ国内 ④アルコール度数は最大80% ⑤熟成樽の容量は最大700L ⑥アルコール度数は最低40%) 決め、来年には法制化されるそうです。
アメリカンシングルモルトの定義ってこの6つだけ!って思わないでもありませんが、未だ定義が定まらないジャパニーズより6つだけでも法律で定められるアメリカって凄いなと思いました。
以上、簡単な様で分かりづらい点も多いと思いますが、「ウエストランド」について聞いて来た話です。